■はじめに
この作品は、2004年、元炭鉱夫・山本作兵衛氏の炭坑画をベースにして、明治から大正、昭和に至る炭鉱の人々の生活を描いたドキュメンタリーです。
この山本作兵衛氏の炭鉱絵画が2011年5月ユネスコの「世界記憶遺産」に登録されました。
この登録によって、再上映の要望も多くいただきこの度アンコール上映をすることになりました。
炭鉱は明治から昭和40年代まで、日本のエネルギーの基幹産業として日本経済を下支えしてきました。しかし石油の登場によってその後すべて閉山に追い込まれていきます。それと同時に、そこで暮らした人々の歴史も忘れ去られていきました。
山本作兵衛氏の絵画は、明治から昭和の炭鉱の人々の暮らしや、仕事を克明に描いています。
そして、山本作兵衛氏の描く炭鉱夫には、どこか清冽にして清廉なものを感じます。それがこの映画を製作する動機でした。
そして、取材をする中で炭鉱に生きた人々に共通する意識が私たちの心を捉えていったのです。それは共同体という絆です。ある炭鉱夫は次のように言いました。
『死という恐怖。それを常に身近に感じながら生きていくとき、最も重要なことは、仲間と「共に生きる」という意識であり意志である』
もしかしたら、その意識の絆から炭鉱社会独特の『人情』や『情愛』が醸成されていったのかもしれません。
山本作兵衛氏が描いた筑豊の地には、今こそ私たちが再認識しなければならない日本人のアイデンティティーや共同体の香りが濃厚にただよっていました。
この映画は、山本作兵衛氏が描く炭鉱の社会と、戦後の炭鉱社会で生きてきた人々の取材とが重なり合って進行していきます。そして、それらが織りなす世界からは、次のメッセージが明確に打ち出されてきます。
『いつの時代も、無辜にして無垢なる民によってこの国は支えられてきたのである』
是非ご覧ください。
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